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からだには希望がある

2015年9月21日、国連国際平和デー当日より、ゆる体操は、誰でも指導できるようになりました。
※これを「ゆる体操の全面的オープン化」と呼んでいます。

究極のローコスト・ハイリターン体操“寝ゆる黄金の3点セット”

第8話 自堕落極まる体操で最重要の身体意識“センター”が形成されるメカニズム

(2015.01.24 公開)

“努力”で育つはずのセンターが、
自堕落極まる「ゆる体操」で形成された

 これまでにご紹介した「腰モゾ」「すねプラ」、そして「膝コゾ」の3つの体操は、まさに自堕落極まるような体操ですが、実はセンターを形成するトレーニング法になっているのです。

 「そんな高級なものが、こんな自堕落な体操でいいのか」と思われるかもしれませんが、まったく話は逆で、私自身でさえ、25歳から35歳ぐらいまでの間は気がつかなかったくらいです。

 昔の私は、“何でも立派にやらなければならない”と考えていましたから、センターのトレーニングでも、“センターのトレーニングはきっちりしたものでなければいけない。立ってやらなければ、絶対にセンターのトレーニングはできない”という思い込みがやはりあったのです。

 考えてみれば、これも当然のことです。センターとは、自分が立った状態で長軸方向に貫いている身体意識ですから、立ってなければできないと思うのが普通です。

 しかし、20代半ばから30代後半の10年間にわたり、私は身体的にも精神的にも深刻な身体と脳機能の低下をともなう暗黒状態ともいえる悲劇的な状況に陥り、ここで紹介しているようなだらしのない、自堕落な体操を自ら着想することによって救われたのです。その経験から自堕落な体操にシフトし、経験と研究を重ねるうちに、こういう体操でセンターが形成できることがわかったわけです。

 現代人のほとんどは、身体が凝り固まって、背骨がさまざまにねじ曲げられゆがんだ状態にあります。その状態では、センターが通るはずがありません。これをズルズルにゆるめてやることで、人間の生体は、勝手に背骨が真っ直ぐになります。素直に一直線になるようにつくられているわけです。

 ゆるめてやることで背骨がきれいに一直線になっただけで、背骨に沿ってセンターが通る……。

 やってみて、これが分かりました。人間の潜在意識と生体の関係のなかには、身体がゆるんで背骨が真っ直ぐに重なり合えば、背骨に沿ってセンターが通るメカニズムがそもそも備わっていたということです。

 将来、脳科学がそこまで進歩できるかどうかは私にはわかりませんが、本当に深く連関的な脳の働きまで究明できるようになるとすると、そうしたメカニズムのすべてが解析されるかもしれません。

 しかし、寝ゆる黄金の3点セットをやると、背骨まわりの硬直した筋肉がゆるみ、身体がズルズルズルと布団にのめり込むように、溶け込むように寝られるようになる。これは、背骨が真っ直ぐに揃って、ゆるんだ状態で、理想的な全身の体位がもたらされる大前提が整った状態です。だからこの状態で立ち上がれば、必ずセンターが通るわけです。

 もうひとつ、先ほど大腰筋という筋肉の話をしました。この筋肉は、背骨の下のほう、胸椎の12番から腰椎の4番の計5個の背骨に直結しています。

 寝ゆる黄金の3点セットをやると、この大腰筋が強力に働きます。そして、大腰筋が活性化するとセンターが強くなる関係も分かってきました。

 大腰筋は、まさにセンターが通る位置、そのラインの両側をピタリと囲んでいます。センターをきちっと取り囲んでいる唯一の筋肉なのです。だから、寝ゆる黄金の3点セットをやると、センターが強くなるわけです。

 ある部分の筋肉が活性化すれば、その部分により強い意識が形成される。たとえば、腕に力をグッと入れるという動作を何回かやっていると、ダラ〜ッとしたときでも、その腕の部分に何か集中するような意識が残ります。

 ちょっとやってみましょうか。

 「はい、右腕の上腕と前腕の屈曲部位に力コブをつくってください。グッと力を入れて、もっと力を入れて、もう少し力を入れて……。はい、結構です。力を抜いてください」

 どうですか、右腕の上腕と前腕の屈曲部位に何か集中したような意識が残っているはずです。それは、右腕の肘関節を中心に強く屈曲しようとした結果、その部分に強い意識が形成された証拠です。

 いまやっていただいたことは、非常に基本的な意識と身体の関係です。大腰筋が使われるようになると、使われていない状態と比べ、当然2本の大腰筋の間に強いライン状の意識が形成されることは、容易に推測できます。

 寝ゆる黄金の3点セットを行うことで背骨をゆるめて直列化する作用、真っ直ぐにする作用、それから、大腰筋を駆使する作用などによって、自堕落極まるような体操でありながら、センターが形成されるのです。おそらく、史上最も労の要らないセンターの形成法だろうと思います。

センターをつくればぶれない自分になれ、
判断力、行動力、人と向きあう力がつく

 いま紹介したようなメカニズムで、この寝ゆる黄金の3点セットをやることでセンターが形成されます。

 「センターの話は分かった。では、私たちにとって、センターをつくることがどう役立つのか。そこが知りたい」

 そうですね、あなたの気持ちはよく分かります。

 まず身体の面でいえば、身体のバランスが取れてくるわけですから、疲れが少なくなります。職場や家庭で作業をしたり、歩いたりなどいろいろな活動をしているときでも、より身体のバランスが取れています。疲労が少ないことは当然です。

 「身体のバランスが取れてないと、そんなに疲労するのですか?」

 いま、こんな疑問が頭をよぎりませんでしたか?

 では、ちょっとした実験をしましょう。立ち上がって、鏡を見ながら上半身を斜め左方向に正確に30度傾けてください。そのまま10分ほど立っていてください。

 苦しいでしょう、おそらく10分も立っていられません。無理して10分もやると、死ぬほど身体が辛くなります。

 その状態が、バランスの取れていない状態、わかり易いモデルです。そして、身体のいろいろなところでそうしたことが起き、そのことによって、常時、本人の気づかない疲労が生産されています。

 特にビジネスパーソンの方には慢性疲労に悩んでいる方が多いのですが、この寝ゆる黄金の3点セットによってセンターが形成されると、慢性疲労が取り除かれます。ビジネスパーソンにとって、これがまず最大のリターンです。もちろん、家庭の主婦や学生や高齢者の皆さんだって、センターができれば、日常の生活動作やスポーツ、さらにはあらゆる趣味の活動が、今までとは比べものにならないほど楽にスムーズに行えるようになります。

 精神面でいえば、自分の中心ができてくること、自分の軸がぶれないことです。責任ある人間として判断したり、行動したり、人と向かい合ったりするときの自分の中心が確立され、集中力が強化されます。

 ひっくり返して考えていただくと分かりやすいでしょう。たとえば、あなたがある相手に対し、「このことはちゃんと決めていきたい」という意思を持って話をしようとします。相手がそのことを感じ取り、その人の中心でこちらに向かってくれないと話などできませんし、もしそうならないとしたら、「この人、いったい何を考えているんだ」となってしまうはず。そうした状態になってしまうと、一見したところ言葉の上ではちゃんと理屈で答えていても、トータルに相手が自分との間で物事を解決し、きちんと先へ向かおうとする意思が感じ取れなくなります。これが、中心がないということです。

 ひるがえって、自分自身にそういう中心が持てるようになってくると、いろいろなことがうまくいくようになってきます。「いままで何かものごとがうまく決められない」「決められないから、先へ進めない」というようなことがあった人は、自分の中心がグラグラしていた可能性があります。そういうところがしっかりしてきます。人間関係における集中力の強化、これが身につくのです。

センターが強くなれば、リーダー候補になれ、
さらに本物のリーダーヘの推進力となる

 センターがさらに強くなり、周囲の他の人たちと比較してセンターが一番強いようなとき、自然にリーダーシップを取るようになってきます。

 人というのは、個々のさまざまな話をするなかで、ちゃんと中心があり、「この人と話をすると話か早いな」とか「ピタッといくな」という思いを持たれるようになれば、だんだんと信頼が高まります。だから、そういう人がリーダーになっていくわけですが、もうひとつ、もっと直感的に何かを感じます。その“何か”というのがセンターで、センターがスパーンと通った人は何となく分かるものなのです。話をしなくても、直感的に分かります。

 たとえば、村などの地域に、突出して高い杉の木があると大変によく目立ちます。「あの一番高い杉の本のところに集まろう」となります。昔でいえばそれが一本杉なり、一本松といった名前になったのでしょうが、みんながより集いやすい“しるし”になるわけです。

 実は、真っ直ぐ高く伸びたものにはみなそのような作用があります。人間は、潜在意識下でそういうことを直感的に感じ取ってしまうということです。

 だから、そういう人がいると、何となくその人のところに集まってきたり、リーダーシップを取ってもらおうとしたりします。そして、人が集まったときに、その人の下で個々のことにおいて中心対中心で話がきちっとつけられるという事実がくり返され、そうした実感を持つようになると、その人の下に集まってきたがるその傾向がいよいよ本物になってきます。

 センターが発達すると、よりリーダーシップを取るように、統率力を持つようになります。あるいは、それをみんなが期待するようになる傾向があります。職場や学校であれば、みなを引っ張るリーダーになりますし、家庭であれば一家の大黒柱として家族を支える力を十分に発揮できるようになります。これには、老若男女関係ありません。

 とはいえ、仕事において例をあげるとすると、具体的な知識がなくても、能力がなくても、ある日突然、みんなのリーダーになれるというわけではありません。センターが強くなると、まずリーダー候補になります。そこから、リーダー候補らしく、センターの強い人らしく、自分が必要な仕事の勉強をし、知識を吸収し、惜しまずに能力を磨いていけば、将来、確実にリーダーになっていけるということです。

 加えておきますと、この3つの自堕落極まるような体操「寝ゆる黄金の3点セット」は、すでにお話ししたように、脳幹を中心に全脳的な機能改善に役立ちます。

 このサイトを読まれているくらいですから、みなさんはもともと素晴らしい頭脳を持っておられるはずです。脳幹を中心に全脳的な機能改善がおこなわれると、持っているもともとの頭脳なりに、脳ミソがグングンとよくなります。いわゆる“頭が冴えている状態”“頭の調子がいい状態”になります。未知の仕事や出来事についてもいろいろと勉強する能力が導き出され、力も出てきますし、家庭で問題が起きた時にすぐに改善へ向けて適切な行動を起こせるようになります。これも、リーダー候補から本物のリーダーになっていく重要な後押しになるのです。

(了)

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