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2015年9月21日、国連国際平和デー当日より、ゆる体操は、誰でも指導できるようになりました。
※これを「ゆる体操の全面的オープン化」と呼んでいます。

究極のローコスト・ハイリターン体操“寝ゆる黄金の3点セット”

第5話 ダラ〜ッとやればやるほど大腰筋が使えるようになる「膝コゾ」

(2014.12.27 公開)

「膝コゾ」の大きなリターン①
腰にいい形の刺激を与える

 最後に、膝コゾにいきましょう。コスト理論からいって、この体操は、先ほどの2つの体操を受けてからやると、さらに意味がある体操です。

 膝コゾは、腰に対するいい形の刺激が大変に期待できる体操です。だから、先に腰モゾをやって腰が変化変動し、さらに脳機能が改善された状態でやると、腰に非常にいい刺激が生まれてきます。

 この膝コゾがどんな筋肉と関連しているかというと、大腰筋です。大腰筋は、お腹の内臓を全部取り出したとき、初めて前から見ることができます。つまり、“インナーマッスル”、深層筋の代表的筋肉なのです。

 「大腰筋は聞いたことがある。スポーツ選手が鍛える筋肉だ」

 そう、大腰筋はトップスポーツの選手が鍛える筋肉の代表的存在です。

 2000年のシドニー・オリンピックの陸上100メートルで優勝したモーリス・グリーンを覚えておいででしょうか。一時、世界記録を持っていた選手で、彼が徹底的に強化に取り組んでいる筋肉として、NHKのドキュメンタリー番組で紹介されたことがあります。また、2008年の北京オリンピック、続いての2012年のロンドン・オリンピックの陸上100メートル、200メートル、4×100メートルリレーで、2大会連続で3つの金メダルを獲得したウサイン・ボルトは、さらに高度な大腰筋の使い方をしていました。

 そんなことも手伝って大腰筋は一気に知られるようになりましたが、トップ・アスリートたちのハイパフォーマンスを最も中心的に支えている筋肉が、この大腰筋です。鍛えられた大腰筋があればこそ、走ったり、蹴ったりに必要な瞬発的なパワーが生まれてきます。だから、いま世界のトップクラスの選手たちはみな、大腰筋がより使えるようにと必死に工夫をしています。

 大腰筋が注目されている観点は、トップスポーツだけではありません。

 ダイエットでも、大腰筋は注目されています。ダイエットに効果があることが知られるようになり、大腰筋ダイエットが女性たちを中心に広まっています。

 もうひとつあります。それは、高齢者の転倒予防です。

 大腰筋が衰えると、高齢者は転倒しやすくなります。一方、大腰筋を使えるように鍛えると、つまり改善すると、転倒が減ると考えられています。私たちのリサーチで、大腰筋を使えるように体操を処方すると、高齢者たちの歩きが改善される実証データがハッキリと出ています。

「膝コゾ」の大きなリターン②
ダラ〜ッとやることで、大腰筋が使えるようになる

 いま紹介した3つの観点で大腹筋は知られるようになりましたが、大腰筋を鍛える場合、専門家たちも考えていろいろな方法を処方します。しかし、これがなかなか大変な体操になってしまいます。

 たとえば、大腰筋を鍛えるマシンがありますが、非常に高い。だから、市民体育館のような公共体育館などで、大腰筋を鍛えるトレーニングマシンを導入しているところはまずありません。

 高齢者が大腰筋を鍛えようとする場合、一番簡単な方法は踏み台昇降です。30センチぐらいの高さの箱を置き、リズムに合わせてその箱を昇ったり降りたりします。それもできない人は、15センチぐらいの高さの箱を置いて同じことをやります。

 大腰筋は、かなり鍛練的にやらないとなかなか鍛えられない筋肉です。

 「鍛えるのがむずかしい筋肉だから、世界の一流選手たちが強化鍛錬に取り組む筋肉だから、もう気合を入れてやらないとダメだ」

 こう思われるかもしれませんが、そのなかなか鍛えにくい大腰筋が、何と膝コゾであっさり使えるようになってしまいます。しかも、簡単にできてしまうその裏をお話しすると、もっとビックリされるはずです。

 「ダラ〜ッとやってください。温泉に入って『ウ〜ッ』とか『ア〜ッ』とするときのように、徹底的にダラ〜ッと気持ちよさを感じるような気分でやってください」

 体操をやるとき、こう申し上げました。そういう状態になればなるほど、大腰筋がより使えるようになってしまうのです。

 寝っ転がって、しかも本当にだらしなく、膝コゾでいうと、痛気持ちいいところを探して、「ああ、そこ気持ちいい〜、気持ちいい〜」となると、人間はどんどんダラ〜ッとなります。リラックスしてきます。そういった状態でやればやるほど、人間というものはシャープに大腰筋を使い出すのです。

 実は、ここに“大いなる常識の嘘”があります。高度な身体の使い方というのは、「一生懸命にまなじりを決してやらなければできない」という常識があります。それは、まったくの嘘です。

 高度な筋肉は、ダラ〜ッとして、温泉にでも入って「ウ〜ッ」とか「ア〜ッ」とするような気持ちになればなるほど、使えるようになります。逆をいえば、そこに私たちが幸せになれる鍵があるわけです。

 「高度な、よりすぐれた身体の使い方をするためには、より気合を入れて、まなじりを決してやらないといけない」とすると、そこにはすさまじいストレスが生まれます。その論理でいくと、高度な身体の使い方をすればするほどストレスが生まれる理屈になってしまいます。そうであれば、私たち人類は決して幸せにはなれません。

 しかし、実は、逆にダラ〜ッとした、温泉にでも入ったときの「ウ〜ッ」といった気分になればなるほど高度な身体の使い方ができるとなると、私たちは必ず幸せになれることになります。

 嬉しいことに、そして素晴らしいことに、膝コゾでそれが証明されたのです。当然のことながら、私たちは、どういう筋肉が使われるか、どういう心理状態で、どういう筋肉が働くかを実験でリサーチしていますから、これらのデータもきちんと得られています。

 これまでの研究データから、膝コゾがより有効に働くためには、腰モゾとすねプラを連関させてやったほうがいいことが分かっています。ここで、この「寝ゆる黄金の3点セット」の科学測定実験の結果を見てみましょう。
>>膝コゾを中心とした3点のゆる体操の科学測定実験

 この調査では、3つの体操を合わせて5分間やり、その前後で歩き方を測定しています。3つの体操で歩き方がどのように変わったかを、厳密にコンマミリ単位で測定したのです。

 “離地”といいますが、後ろ足になっている足が床を蹴ってから空中をずっと移動し、軸足の横を通って、前方に接地します。そのプロセスのなかの足(つま先)の高さは、「みなさん、はいどうぞ、適当に歩いてください」といって歩いてもらうと、誰でも無意識にコントロールしています。

 歩くとき、蹴ってから接地するまでの間で足の高さが最も低くなるときはどんなときでしょうか?

 はい、ちょっと歩いてみましょうか。お分かりになったでしょうが、足の高さが最も低くなるのは、軸足の真横を通るときです。

 高齢者が転倒するのは、この軸足の付近を通るときになります。畳の縁とか、極端にいえば、古い家などでは床がちょっとうねってわずかに高くなっているところがありますが、そこに引っかかって転倒してしまうのです。まさにミリ単位の高さで転倒してしまうわけです。

 この測定で、「寝ゆる黄金の3点セット」をやったあと、つま先の最下点の高さが上がることが立証されています。体操前と比較すると35%、高さにして4.6ミリ上がったデータが得られました。5人の被験者でやりましたが、統計学的にも優位という判断ができるデータが得られています。

 この3点セットをやったことで大腰筋がより働くようになり、実際に歩きも改善されたのです。参加していただいた被験者たちは、いずれも「楽に歩けるようになった」と実感を語ってくれました。

 大腰筋を使った歩きは、若い人でいえば格好いい歩きです。スポーツ選手でいえば、より高度なパフォーマンスになります。高齢者でいえば、転倒予防に効果のある歩きといえます。

 さらに、そういう歩き方が普段の歩く習慣になれば、ダイエットにもつながります。とくに大腰筋が使われ出すと、腹部の内臓脂肪に対する刺激効果が強くなります。だから、仮に全身の体重があまり変わらない場合でも、ウエストまわりが変わってきます。お腹がスッキリしてくる効果があります。

 膝コゾで大腰筋が使われる秘訣は、何といってもダラ〜ッとすることです。

 人間というものは、気合を入れて一生懸命やろうと思うと、大腿の前面にある大腿直筋に力が入ります。一方、ダラ〜ッとすると大腿直筋が脱力して使われなくなり、もっと奥にある大腰筋が使われるようになります。ここが身体の面白いところです。

 ダラ〜ッとしないで膝コゾをやろうとすると、大腿骨の屈伸運動になってしまいます。ノルマで「さあいくぞ、1、2、3、4」みたいに気合を入れてやると、コゾコゾの動きを大腿直筋でやってしまうことになります。

 「ゆる体操」は、どの体操でもダラ〜ッとが基本です。決して「きちんとやろう」と思ったり、「よし、ダラ〜ッとするぞ」と頑張らないでください。自然にダラ〜ッと、だらしなくダラ〜ッと、限りなくダラ〜ッとやる。それが大きなリターンにつながるのです。

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