YURU EXERCISEロゴ
YURU EXERCISE
からだには希望がある

2015年9月21日、国連国際平和デー当日より、ゆる体操は、誰でも指導できるようになりました。
※これを「ゆる体操の全面的オープン化」と呼んでいます。

究極のローコスト・ハイリターン体操“寝ゆる黄金の3点セット”

第3話 ゼロコストに近いのに大きなリターンが得られる仕組みとは?

(2014.12.13 公開)

気持ちいいから他の場所もやりたい!
それ自体がまず大きなリターンの証明

 ここまでの3点セットで寝てしまった方は、朝の爽快な目覚めのなかで、「こんなに熟睡したのは何年ぶりか? それにしても、ウ〜ン、何ともいえないいい気持ちだ」と思われているはずです。

 いま紹介した「寝ゆる黄金の3点セット」は、コスト理論からいって極めてすぐれた体操法です。その第1のリターンですが、おやりになったみなさんが「ついやっちゃうよ」というところに象徴されています。

 たとえば、膝コゾでいうと、「痛気持ちいいところを探したくなりませんか?」とお聞きしたとき、「ああ、やりたい!」とあなたは思われたはずです。3ヵ所も4ヵ所も探して、そこもついやってしまったはずです。次々にやりたくなる場所を探してしまうということは、実はすでに優れたリターンがあるからです。

 他の体操のように、「このまま続けてください」といわれて続けるのであれば、同じ場所で同じ動作を繰り返しているはずです。やってみたくなる場所を探し回って次々にやるということ、つまり自ら“行動の変容”が起きてくるということは、一ヵ所で身体を動かしてみた結果を自分が評価しているからに他なりません。「これは間違いなくプラスだ」という評価が、他の場所を探してやりたくさせ、ついやってしまうわけです。

 別の角度からいうと、探し回って他の場所でもやることは、わずかですが脳のコストを使っています。プラスの評価が自分のなかに生まれていなければ、“やりたいからやる”という動機づけは生じません。

 「体操法としてこうなっています。だから、場所を動かして5ヵ所やってください」といわれ、「そうですか、まあ、5ヵ所くらいならたいしたことないから、やるか」というのとはまったく違うわけです。

 ついやってしまうというそこに、実はすでに大きなリターンが生まれているのです。そのリターンが何かというと、他でもありません、“大変気持ちいい”ということです。そこからの熟睡、さわやかな目覚めも大きなリターンです。

 痛いと気持ちいいの中間に、“痛気持ちいい”という感じがあります。この“痛気持ちいい”感覚は、疲れている身体、疲れている身体の部分にとって、単に気持ちいいより、はるかに刺激的に気持ちいいものです。この痛気持ちいいという感じが、いま紹介した膝コゾで得られる最初のリターンのサインとなります。

 最初の腰モゾでいえば、腰の重苦しい感じとか、何か固まってしまった感じがほぐれていく。その感じが非常に気持ちいい。すねプラも、やはり疲れがたまって、老化が非常に早く進む部位の代表である腓骨および腓骨まわりが、いい形で刺激を受けます。当然、マッサージ効果もありますので大変に気持ちいいし、人によっては痛気持ちいい感じまで得られることがあります。

 「気持ちいい」という言葉は以前から使われていましたが、2004年のアテネ・オリンピックで再浮上しました。ご存じのように、競泳平泳ぎの北島康介選手がライバルをなぎ倒し一位になった直後に、「チョー気持ちいい!」といったことがきっかけです。

 気持ちいいことの第一義的な効果は、“人がそれを続けたくなる”ことです。お金を払っても、かなりの時間を費やしても、人間は、気持ちのいいことは「やりたい」と思います。「続けたい」とも思うものです。

 たとえば、お酒を飲む、自分の好きなものを足を運んで食べにいく、好物を買ってきて食べる、1泊2日で温泉旅行に行ってくる、男女で愛し合う……。

 これらの行動には大小の差があるものの、みなコストがかかります。しかし、気持ちいいからやるわけです。気持ちいいからついやりたくなるし、またやってもしまうのです。

 その最たるものは、マッサージ(や温泉・風呂・シャワー)です。本当に疲れ果てて身体が固まってどうしようもなくなったとき、マッサージを受けにいきます。世界中のどこでも、ビジネスパーソンの多い場所にはそういうスポットがかなり増えていますし、OLさんで通い詰めている人もいるほどです。

 「気持ちいいから何かをしたい」ということは、コストがかなりかかっても、それをやる価値があるということです。「寝ゆる黄金の3点セット」は、その気持ちよさが実にゼロコストに近いところで得られます。これだけで、ほとんどの方がこの体操を毎日毎日、ついつい続けてしまうようになります。

 ゼロコストで素晴らしく気持ちよくなれる。熟睡できて、爽快な目覚めが迎えられる……。あなたにとって、これだけでも、「寝ゆる黄金の3点セット」のリターンはかなりのものといえます。ただし、先ほど偉そうに「リターンとして98点は取りたい」といいました。気持ちいいだけを何点にするかといえば、せいぜい20点くらいと考えます。

 「では、残りの78点としてどんなリターンがあるのか?」

 あなたとしては、ここをぜひお知りになりたいでしょう。そこで、次にその“残りの78点のリターン”の話をしたいと思います。

「腰モゾ」の大きなリターン①
直立二足歩行で、人間の何が変わったのか?

 残りの78点の大きなメリットについて、まず腰モゾからお話ししましょう。

 ちょっと立ち上がって、歩いてみてください。それを直立二足歩行といいます。かつて立ち上がるレッサーパンダが人気を集めましたが、人間ほど完全な直立二足歩行をする動物は他にはいません。ここで、ひとつ質問をさせていただきます。

 「では、直立二足歩行をするようになった人間は、一般の哺乳類から何か変わったでしょうか?」

 二本足で歩くようになった……。これは答えになりません。それは直立二足歩行という言葉のなかに書いてあります。そうではなく、たとえば解剖学的な構造でどう変化したかという質問です。

 手が短くなった……。これも違いといえば違いになるかもしれませんが、決定的な違いではありません。

 「う〜ん、分からない。教えてくれ」

 はい、ここで答えをお教えしますから、誰かにひけらかしてください。答えは、「仙骨というものができた」です。

 人間の骨盤は、腸骨と仙骨から構成されています。腸骨は大きな蝶々が羽を広げたような部分で、仙骨はその中央にあります。2つの腸骨に挟まれ、背骨のいわば最後のほうにある板状の骨です。

 この仙骨は、実は一般の哺乳類にはありません。人間が直立二足歩行を選ぶ過程でできた骨なのです。

 といっても、突然にできた骨ではなく、5つの背骨が融合してひとつの骨になってできたものです。その証拠に、胎児の段階では5つの背骨に分かれています。赤ちゃんのときにはもう仙骨化し始めますが、まだ5つの背骨の隙間が残っています。

 いうまでもなく、正確には人間も哺乳類です。ですが、用語を簡潔にするため、「この本でここから先に“哺乳類”といったときは“人間以外の哺乳類”を指す」とここで定義しておきましょう。

 さて、鎖骨、肩胛骨といった骨は、哺乳類にはみんなあります。手足の骨もみなそろっています。馬のように人間の中指に当たる指がヒズメになったとか、一本の指になったといったようなことがありますが、哺乳類と人間をトータルに比較したとき、骨格的な最大の違いが仙骨になるのです。

 では、なぜ仙骨などという骨をつくらなければならなかったのでしょうか? その理由は、直立二足歩行をすることで、胴体から頭、腕などの体重を支えることがどれほど大変な重労働になるかということから見えてきます。

 背骨が鎖状の背骨のままでは、座り続けたり、立ち続けたり、あるいは歩き続けたりの状態で直立姿勢を保つことはとうてい不可能です。何気なくおこなっている胴体から頭、腕を支えながらの直立歩行は、実に並大抵の労働ではないということです。

 だから、大抵の人が、20代後半ぐらいから腰の疲れを感じ始めます。人によっては腰痛になったり、椎間板ヘルニアや坐骨神経痛を起こしたり、医者に何度も何度も通ったりしなければならない状態になります。

 一番恵まれた人の場合でも、やはり若いときに比べて段々身体がしんどくなってきます。そのようなとき、腰が、最もそのしんどさが生まれる中心になっています。こう説明すると、みなさんも、「なるほどそうだよな」と実感として思われるのではないでしょうか。

「腰モゾ」の大きなリターン②
腰がゆるみ、脳を揉みほぐす

 5つの鎖状だった背骨が、仙骨のように大きな石の板のような塊にならざるを得なかった……。私たちは何気なく直立二足歩行をおこなっていますが、直立二足歩行はそれほど大変な重労働なのです。

 そして、直立を支える中心になっている仙骨と仙骨まわりの筋肉、そしてさらに骨格を考えてみましょう。こうした部位は、極めて不可能なことを可能にする重労働をおこなっていることになります。想像を絶するコストがかかっているわけです。

 「では、こいつを休めてあげればいい。そういう体操もある」

 おっしゃる通りです。休めることも確かに大事ですが、その重労働が生まれる状態、つまり直立の姿勢のまま、その部分を体操で何とかしてあげようというのは、大いなる矛盾になります。

 なぜかといいますと、腰をよくするために立位のままで体操をおこなうことは、腰に大きな負担をかけっぱなしのまま治そうとする行為になります。これが自家撞着になることはお分かりでしょう。

 では、そのためにどうすればいいでしょうか?

 一番いいのは寝てしまうことです。寝ると、体軸と地球と人間を結ぶ重力線の角度が直角になります。この角度を直角にすると負担が減るだけではなく、さらに、ひとつの方向と直角の方向にものが伸びていったり縮んだりします。

 分かりやすい例を挙げましょう。豆腐やコンニャクのような柔らかいものを立てると、高さが縮んでいきます。つまり、太くなります。寝かせると、ベロ〜ッと伸びていきます。実は、こうした状態が腰に起きています。

 夜、「疲れたから」とみなさんがそのまま寝てしまうと、脳神経系も、筋肉白身も、直立の状態を記憶したままになっています。そうしたときの身体は、こわばった状態のまま置き去りにされた状態です。8時間ぐらいの睡眠を取ってもこの状態は改善されませんから、こわばったままで朝を迎えることになります。

 しかし、腰モゾのような若干の左右の運動、身体をゆするような柔らかなモゾモゾ運動を加えてあげると、腰が高効率に伸びていきます。

 腰モゾを解剖学的に解き明かすと、左右の腰のさまざまなパーツ、たとえば仙骨とその上にある5つの腰椎、仙骨の両隣の腸骨、それらについている筋肉などをお互いにわずかに左右にずらし合う運動になります。

 モゾモゾと重力をうまく90度方向に変換しながら、時には解きほぐれるように動かしてあげると、与えられた運動刺激を手助けにしながら、脳も、腰のパーツである筋肉自身もそこで新しい動きを築くようになります。腰をモゾモゾさせることは、実は筋肉と脳の状態を変えることになるわけで そのあと、すねプラとか、膝コゾをやります。この体操をすることで、脳は、腰をさらに柔らかく解きほぐすような動きをついやり出します。

 「この体操は、そこまでうまく仕組まれているのか。だから、大きなリターンもあるわけね」

 ピンポーン、その理解は大正解です。

 腰モゾで、高効率に腰がほぐれるような動きをさせてあげる。そのことで腰自体もほぐれると同時に、固まりっぱなしになっている脳も変動成分豊かな脳に変わり、変動的な情報制御をするように変えられていきます。

 そうすると、直接の腰の運動ではないすねプラとか、膝コゾをやったときにも、腰がどんどんどんどんほぐれる方向で脳が働き出します。わずかなことのように見えますが、腰モゾは、脳のそうした状態と反応を予測し、実は脳の改善をする体操なのです。

最新情報